赤いズボンの男の子2

2000/5/19UP

注)先に『赤いズボンの男の子』をお読みください。でないと話が通じません。

(解説)
 服装の趣味がドンドンと倒錯していく、あきらくん。
 男っぽいとか、女の子みたいより『楽しい』とか『面白い』とか
 自分なりの価値観を大事にしてる子なんです。
 なお「おねえちゃん」と「おねえさん」は別人で明確に使い分けられてます。



 おねえちゃんがお買い物から帰って来た。

「ただいま~」

 ね、買って来てくれた?

「あのね、男の子向きの赤い服ってあんまり売ってないのよ」

 ピンクでもいいって言ってるのに~

「もっと売ってないわよ!」

 女の子のだって分かりゃしないって。

「分かるのよ!男の子は左前で女の子は右前なの」

 ふ~ん、だったらスカートでもいいのに~

 ……痛った~い。殴ったあ。

「いい加減にしないと、もっと殴るわよ」

 ごめんなさ~い。

 あっ、でもちゃんと赤い半ズボンを見付けて来てくれたんだ。

 やっぱり、ピンクより赤い方が好き。

 おねえちゃん、だ~い好き!

「あ~、もうベタベタしないの。暑いでしょ」

 ボクは、履いていたズボンを脱いで新しいズボンを手に取った。

「あきら、またそんなパンツ履いてるんだから。
 ちゃんと白のブリーフ履きなさいって言ってるでしょ!」

 わ~ん、脱がさないでよ~、
 男の子用のピンクのトランクスなんてレアアイテムなんだぞ~、
 女の子用のパンツは前が空いてないからトイレで困るだもん。

 ねえ、赤いパンツが欲しいの。買って来てよ。

「ふう、何でこんな子になっちゃたのかしらね」

 おねえちゃ~ん、ため息つかないでよ。

 スカートを履くのやパンツを履かないのは、ちゃ~んとやめてるでしょ?

「一度、お父さんに教育してもらわないとダメね」

 お父さんなら、いつもみたいに寝てるよ~。

 それよりパンツ返してよ~。



 なんでか知らないんだけど、ボクたちは家族で温泉に遊びに来た。

 おねえちゃんがお父さんに、ボクの教育がどうとか言ったら
 家族サービスだって行って連れて来てくれたんだ。

 でも、お父さんは車を運転して来たんで疲れてノビちゃってる。

 ねえ、ねえ、お風呂に行こうよ~。

 「あきら、おねえちゃんと一緒にお風呂に行こうね」

 うん。

 おっきなお風呂って楽しみだなあ。



 ボクってさ、男だよね?

 今日は女の子みたいなカッコしてないよね?

 あのおじちゃんって分からなかったのかな?

「今ね、男湯誰も入ってないんだって。子供1人だと危ないでしょ?」

 え~、女湯なんてヤだよお。

「大丈夫。8歳以下はどっちに入ってもいいことになってるの」

 でも~

「仕方ないでしょ。お父さん寝ちゃったんだから」

 女湯も誰も入ってないといいのになあ。

 でも、なんかおばちゃんたちの声がするし~。

「はい、脱いだらこれ履いて」

 とボクがおねえちゃんに履かされたのは、こだわりの赤い海パン。

 よくわからないんだけど、その方がいいんだって。

 おばちゃんたちが、脱げ脱げって言うんで脱ごうとしたら
 おねえちゃんに怖い顔でにらまれちゃった。

「この上、脱ぎ癖や見せ癖までついたら終わっちゃうわよ」

 ね?何が終わるの?ねえ?

 わ~ん、ポカポカ殴るのやめてよ~

「ふう、あんなお仕置きするんじゃなかった……」
 

 部屋に戻るとお父さんは浴衣を着ていた。

 なになに?

 この旅館って、浴衣だけじゃなくって、ふんどしなんか貸してくれるの?

 え?ふんどしは買うの?

 やった~、赤いふんどし~

「お父さん……確かにあきらを男っぽくする方法を相談したけど、
 ちょっと方向性が違うんじゃ…
 まあ、確かに赤い下着欲しがってたから喜んでるけどさ……」

 ふんどしってさあ、ヒモで調整できるから大人用のでも子供が履けるんだよ~、
 ヒモがいっぱい余っちゃってるけど。

 あはは、ヒモ引っ張って解いたら簡単にストーンって脱げちゃうんだね。
 気をつけないとね。

 おねえちゃん、どう?カッコイイ?

「まあ、ピンクのトランクスよりは男の子っぽいけどね」

 

 う~ん、むにゃむにゃ……

 おばちゃ~ん、おトイレってどこ~?

 うん、ボクってちゃんと夜中におトイレに行けるんだよ。偉いでしょ~。

 でも~、ねむいの~



「あーあ、ヤッパリはだけちゃってる。あきら起きなさい。風邪引くわよ」
 
 ちゃんと着てた筈の浴衣はすっかり脱げそうになっていた。

 そうか、ヒモがほどけちゃったんだな。

 あ、ふんどしのヒモもほどけちゃって、お布団の横にけり出しちゃってる~。

 ボクの宝物なのに~。

 うん、宝物にするの。ピンクのトランクスと
 キレイなおねえさんからもらったシャツとスカートといっしょ。

 「あ、頭痛いわ……」
 

 ボクは、お洋服を着ておねえちゃんと顔を洗いに行った。

 そしたら昨日、お風呂場で会ったおばちゃんがいた。

 何?お風呂では履いてるのに、廊下では履いてないのねって?

「ね、あきら。あんた夜中にトイレとか行った?」

 う~ん、行ったような気がする。

 それよりさ、温泉って楽しいね。

 お父さんにお願いしてまた来ようね。

 おねえちゃん?

 何で怒ってんの?

 ねえってば。
  


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