赤いズボンの男の子4
2000/12/1UP
注)先に『赤いズボンの男の子』1~3をお読みください。でないと話が通じません。
(解説)
歯医者さんネタでどうしてこうなるんでしょうか?
まあ、取り敢えず復活ってことで勘弁してください。 ムス~
ボクはちょっと不機嫌だった。
いつものように、電車に乗っておねえさんの喫茶店に遊びに来たんだけど、
学校の先生は、子供だけで喫茶店に入っちゃダメなんて言うんだ。
ボクは、『喫茶店』に来たんじゃなくって、おねえちゃんのお友達のおうちに来ただけで、
そこが喫茶店だっただけだもん。
そう、しゅちょうしたら「へりくつをこねるな!」って頭をポカリと叩かれた。
どう考えても正しいのはボクだよね。
それで、カウンターに座って、ぷりぷりしてたら、お客のおじさんが
「そんなに怒ってたらキレイな顔が台無しだよ。お嬢ちゃん」
なんてボクを女の子扱いしたんだ。
おねえさんは笑ってた。
「ちょっとボーイシュな格好でしょ?」
なんて言っちゃって。
やっぱり、ピンクの開襟シャツに赤い吊りズボンって女の子みたいなのかなあ?
ところで『ぼーいっしゅ』ってなに?
オマケに、クッキーを食べていたら、虫歯が痛くなってきちゃったんだ。
「あら?アッくん?虫歯?」
あ~っ、まだ半分しか食べてないのに~!
「虫歯が治ってからね」
ちぇっ。
おねえちゃんと同じこと言うんだから。
歯医者さんってさ
ギャンギャンって音のするドリルを口の中に突っ込むんだよ。
イスにさあ、ガシンって縛りつけて酷いことするんだよ。
おねえちゃんもおねえさんもボクがそんな目にあってもへーきなの?
「そんな目で見てもダメよ」
えーん、おねえさんもおねえちゃんとおんなじ怖い顔するんだから。
でね~、おねえちゃんったら、歯医者さんに行くまで
おやつ抜きだって言うんだよ。
酷いでしょ~
ボクは、ヒロシにいちゃんとお風呂に入って頭を洗ってもらいながら言った。
「だから、うちにお菓子をたかりにきたのかい?」
ヒロシにいちゃんは少しあきれたように答えた。
うん、でも女ってすぐにケッタクするからダメだったの
「そりゃあ、虫歯の子に甘いものは出せないよ」
でも、予約がいっぱいだから2週間も先なんだよ~
それまでガマンしろなんて酷いよ~
「まあ、ほっといて治るもんじゃないから仕方ないよ…さっ、流すから目つぶって」
ざあ~っ。
ヒロシにいちゃんはシャワーがあるのにワザワザ洗面器で頭を流してくれる。
それから小さな湯船に一緒に入る。
本当に小さいから、ギュウギュウつめになっちゃう。
ね、今度いっしょに銭湯に行こうよ。
おねえちゃんと一緒だと、女湯に入らなくちゃならないんだもん。
結局、ボクは半分追い出されるみたいにして家に帰って来た。
「わんわんわん」
家の前で、近所のポチがじゃれ付いてくる。
ポチは、ちっちゃくって、白くて、ふわふわしたマルチーズなんだ。
人懐っこくって、誰にでもじゃれてくる可愛い犬なの。
おねえちゃんは、ボクに似てるっていうんだけど似てないよね?
そういえば、何日かポチを見なかった。
「入院してたのよ」
病気だったの?
「ううん、去勢してたの」
去勢って?
おばちゃんの話はよくわからなかっんだけど、おちんちんを取っちゃたんだって。
犬の男の子はそうするもんなんだって。
ボクは人間でよかったなあ。
「あら、人間でも取っちゃう人はいるのよ」
おばちゃんは笑いながらそう言ったんだけど、そんな人って本当にいるのかなあ?
ボクは歯医者さんのイスに座らされていた。
手足を鉄の輪っかみたいな物で固定されちゃってて動けない。
看護婦のおばさんがボクを見てニヤニヤと笑っている。
先生は先生で舌なめずりをしながら、閻魔様が舌を抜くときに使うみたいな
釘抜きをチャキチャキと動かしたり、甲高い音を出すドリルを回したりしている。
顔を動かすと隣のイスにもボクと同じぐらいの男の子が縛り付けられていて、
時々、悲鳴をあげている。
無理矢理に口を開けさせられて、口にドリルを突っ込まれて顔からは涙がこぼれてるし、
ズボンは漏らしちゃったらしいオシッコで濡れてるみたい。
「さ、口を開けて」
先生は無理矢理に口を開けさせる。
「あ~、これは酷いね。全部抜いちゃおうね」
や、やだよ。
「抜きたくない?」
うん。
「じゃあ、上はやめて下にしようね」
下?
ボクが何のことか分からないでいると、突然ズボンを脱がしたんだ。
なんで?
「ポチと同じことをするだけだよ。歯を抜くのがいやならこっちを抜かないとね」
言ってることがムチャクチャだよ~!
やだあ~!!
ゴン!
暴れた拍子に頭を打っちゃった。
???
どこに頭をぶつけたんだろ?
キョロキョロと見回すと、ヒロシにいちゃんの部屋だった。
あ、そうか。
お風呂に入った後、眠くなって寝ちゃったんだ。
慌てて、パジャマのズボンに手を突っ込む。
……いつでもお泊りできるようにってヒロシにいちゃんがくれたんだ。
でも、なんでピンクのクマさん模様なんだろ?
よかった。ちゃんと付いてる。
「アッくん、寝る前に行ったよね。確か」
あ~、ちがうちがう。
新しいパンツなんか出さないで大丈夫だったら。
「それじゃ、引っ張るよ」
怖いよ~、やめようよ。
「引っ張って抜いた方が早いって」
ボクの決心が固まる前に、ヒロシにいちゃんは糸を思いっきり引っ張った。
あっ!
グラグラしていた虫歯は、呆気なく抜けてしまった。
「ほら、簡単だったろ?」
うん…
でも、口から血がいっぱい出ちゃって気持ち悪い。
「抜けたのは上の歯だから、屋根の上に放り投げるんだ」
なんで?
「丈夫な歯が生えてきますようにっておまじないだよ」
ふーん。
ボクは、抜けた歯を手の中で眺めて見た。
何度も触ったから、ツルツルしててピカピカしてる。
でも、上の方は、チョッピリ欠けてる。
ちょっと残して置きたい気がしたけど屋根の上に放り投げる。
小さな歯は、すぐに見えなくなっちゃった。
でも、ボクの虫歯は一本だけじゃなかったから、
しばらくは甘いものを食べさせてもらえなかった。
歯医者さんに行っても泣かなかったんだよ。
だって、そんなに怖くなかったんだもん。
ただ、先生が「本当に男の子かい?」ってズボンの上から触ったんだ。
夢を思い出して、チョッピリ漏らしちゃったことはおねえちゃんには内緒。
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