小さい頃も失敗したパンツを替えてやったよな?
大助&友也シリーズ3

2000/03/09UP

(解説)
 この2人なんですが当初から『ホモじゃないし、ならない』って設定がありました。


「なあ、友也って実は女だったりしない?」

 読んでいたコミック雑誌から顔を上げた大助は真顔でそう言った。

「何、馬鹿なこと言ってんだよ。俺が女なわけないだろ」

 友也が怒ったように答える。

「だって、漫画なんかでよくあるじゃんか。
男だと思ってた女顔の親友が実は女だったっての」

 どうやら、読んでいた雑誌にそんな話が載っていたらしい。

「怒るぞ。いくら俺が女顔だからって。
大助とは風呂も一緒に入ったし、俺の裸だって何度も見てるだろ?」

「うん、何度も見てる。それどころか……」

「わあっ!ストップ、ストップ……」

 友也は慌てて余計なことまで発言しようとする大助を制止した。

「バカ、今日は、おばさんだって家にいるんだぞ。聞かれたらどうすんだよ……
バカ言ってないで宿題の続きやるぞ。休憩終わり」

「思春期の途中で性別が変わっちまうとかいうのも有りだよな」

 ポカリ!

「痛ってえなあ。ポンポン叩くなよ」

「いつまでもクダラナイことを言ってないで、続きをやる!
大体、サボリまくってて宿題出されたのは大助なんだぞ。
関係無い俺まで付合ってやってるんだから、さっさと終わらせろよ」

 友也は少し凄んで見せる。

「俺だって、さっさと寝たいよ。だから友也が解いてくれよ、
俺はそれを写すからさあ。その方が早いってば」

 ポカリ!

「だから、ポンポン叩くなってば、バカになるだろうが」

「こないだ、それをやったら二人しておばさんに怒られたのを忘れたのかよ」

 大助のお母さんは、友也に対しても怒ることを遠慮しない。

 三歳の時からよく知っているし、友達の子供だし、
何より友也のお母さんがのほほんとしていてあまり怒らない人だから
怒ってもらうと躾ができるといって喜ぶからだ。

 前回は連帯責任ということで2時間も正座をさせられた。

 主に悪いのは、大助なのに。

 もっとも、大助は正座のまま監視付きで宿題をやり直しさせられてしまっていたのだが。

「はい、問3をやる」

「分からねえよ!」

「分からなかったら教えてやるから……」

「どこが分からないのかが分からない」

 ヤレヤレ。

 本当は俺がやった方が早いんだけどなあ。

 そう思いつつも友也は懇切丁寧に解説してやる。

「……で、こうなる訳。分かった?」

「…………」

 大助はいつの間にかコックリコックリと居眠りをしていた。

 ドガッ!

 流石にこれには友也も頭に来た。

「ボカボカ殴るなって言ってるだろ!」

「やかましい、殴られたくなかったら、さっさと宿題やれよ。
今度寝たら、放って置いて帰るからな!勝手に先生に怒られて落第でも何でもしろ」

 大助は、しぶしぶ宿題の続きに掛かる。

 怒った友也には勝てない。

 それから数十分の間は、大助も必死で宿題を片付けて行った。

 こういう顔を見てると、頭良さそうに見えるのにな。

 友也は、ぼーっと大助の真剣な表情を見詰めていた。

 女の子って男のこういう表情に惚れるのかな?

 もし、俺が女だったら大助のどんなところに惚れるのかな?

 スポーツが得意なところ?

 誰とでも仲良くなれるところ?

 ぶっきらぼうだけど優しいところ?

 ……何、考えてんだ俺?

 友也は、頭の中に浮かんできた感情を否定した。

 大助が変なことを言い出すからだぞ。俺が女だったらなんて……

 大助の一番、大助らしいところは……

 意地っ張りの癖に甘えん坊で、情けないところじゃないか。

 そんな男に誰が惚れたりするもんか。

 大助の面倒を見れるのは俺ぐらいなもんだ。

 そうそう、いつも結局、こんな顔して俺を頼るんだ。

 えっ?

「な、最後の問題だけ手伝ってくれよ。全然、分かんねえんだ」

 大助が、ちょっと情けない表情ですがるように友也を見詰めていた。

「な、頼むよ……」

 友也は問題集を覗き込む。

「何だよ、最後の問題って漢字の書き取りじゃないか。辞書でも引けば分かるだろ」

 大助は、その言葉が終わらない間に立ち上がって歩き始めた。

「うん、そうだけどさ。俺ちょっとトイレに行ってくるからさ……」

「待てい!」

 友也は大助の手を掴んで引き止める。

「ここまでやったんなら最後までやれよ」

「最後だから頼むんじゃねえか。それぐらいやってくれたっていいだろ?」

 拝むように両手を合わせる大助に友也は言い放った。

「あ・ま・え・る・じ・ゃ・な・い」

「分かったよ。トイレから戻ったらやるからさあ」

「ダメ!」

「えーっ、だって本当に漏れそうなんだぜ」

 友也は勝って知ったる大助の部屋の箪笥からスポーツタオルを取り出すと、
大助の履いているジャージを中身のパンツごと引っ張って、
有無を言わさず一番内側にタオルを挿入する。

「これで漏らしても大丈夫だろ?さあ、さっさとやる!」

「鬼!悪魔!学校の手先!母ちゃんの回し者!」

 大助は情けなさそうな顔をして抗議する。

 これこれ、この顔をしてる時の大助が一番カワイイんだ。

 幼馴染の俺にしか見せない表情。

 大助は苦悶の表情を浮かべながら、問題を解いて行く。

 本当にトイレを我慢しているようだ。

「なあ……」

「できたのか?」

「いや、あと2つなんだけど……」

「だったら、さっさとやる!」

「……俺、そろそろ限界なんだけど」

「小の方なんだろ?そのままやっちまえよ」

「本気かよ?」

 数秒後、大助の動きが固まった。

 低いうめき声に、恥辱の表情とほっとした表情の入り混じった顔。

「出ちゃった……」

「恥ずかしい奴だな。中学生にもなって、おもらしか?」

「誰のせいだと思ってるんだよ!」

「さっさと問題を解かない大助が悪いんだろ」

「うっ…」

 友也は、グッショリと濡れたスポーツタオルを大助のパンツの中から取り出した。

「なんだよ、パンツにまで染みてるじゃないか」

「仕方ねえだろ!」

「ほら、パンツ替えてやるから」

「自分でやるよ。それぐらい」

「替えさせてくれないと、声出しておばさんを呼ぶぞ」

 友也は大助の世話を焼くのが楽しくて好きだった。

 まるで幼稚園ぐらいの子に対してそうするように大助のパンツを脱がせると
股間の濡れた部分をタオルで拭いてやった。

 ほんと、大助ってば中身は幼稚園の頃とちっとも変わってない。

 調子に乗って、ゴシゴシを力を込めて拭く。

「うっ」

「白いのは出すなよ」

「だ、誰が!」

「幼稚園の頃も、こうやってパンツを履き替えさせてやったことがあったよな」

「でも、その後で俺も友也のパンツを履き替えさせてやった」

「あれは、お前のオネショが大き過ぎて俺にまで被害が及んだからだ」

「いいや、あの時にオネショしたのは友也だった。俺が庇ってやったんだ」

「違うってば、絶対に大助の失敗だった!」

「嘘付け!昔から漏らすのは友也の方が多かった」

「俺がいつ漏らしたっていうんだよ!」

「この前のゲームの時とか、風呂場で一緒に……」

「あの時は、お前の方が早かった!」

「でも、量から言えば友也の方が多かった」

「やったのは大助だ!」

「いいや、友也だ!」

 その騒ぎを聞き付けてお母さんが飛んで来た。

「もう真夜中よ。こんな時間に騒いだりしちゃあ近所迷惑じゃないの」

 大助と友也は同時に抗議した。

「だって、大助が……」
「だって、友也が……」

 だが、お母さんは聞いてくれない。

「大助、宿題をするって言うから明日が休みでもないのに友也くんが泊りに来るのを許したのよ
……それを友也くんまで一緒になって騒いだりして」

「だって、大助が……」
「だって、友也が……」

 二人は引き下がらない。

「ふう、二人ともおしおきが必要ね」
 
 そんな訳で、パンツを下させられてお尻を叩かれた。

 思えば幼稚園の頃から、よく叩かれていた。
 
 大助のお母さんは友也に取っても、自分のお母さんと同じく頭の上がらない相手なのだ。

 だが、中学生にもなって、ペロンと出したお尻を引っ叩かれるというのは、とっても恥ずかしい。

「で?喧嘩の原因は何なの?」

 お母さんが不思議そうに尋ねる。

「うん、俺達が幼稚園の頃に大きなオネショしたの覚えてる?」

「ああ、うちでお昼寝した時ね?よく覚えてるわよ」

「友也ってば、俺がオネショしたのを庇ってやったって言うんだぜ、本当は俺が庇ってやったのに」

「違うってば、本当に俺が大助の失敗を庇ってやったんだってば。ねえ、おばさん、そうだよね?」

 二人はすがるような顔でお母さんの顔を見上げる。
 
 事件を覚えている者の証言は貴重な武器だ。

「あんた達、そんなクダラナイことで喧嘩したの?」

 お母さんは、溜め息をつくと古いアルバムを持ち出してきた。

「貼ってあるのを見たら、絶対に破っちゃうって思ったんで隠してあったんだけど」

 と1枚の写真の下に隠してあった写真を取り出す。

「ああっ、汚ねえ。そんなとこに隠してやがった」

 大助は抗議しながらも写真を覗き込む。勿論、友也も覗き込む。

 大きく濡れた布団をバックに下半身丸出しで泣きそうな顔の幼稚園児の二人。

 中学生の二人は、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にする。

 確かにこれは破って捨てたい。

 というより他の人間には絶対に見せられない。

 良く見ると2つの染みが中央部分で合体している。

「分かった?あんた達は二人ともオネショしたのよ。わたしがジュースを飲ませ過ぎちゃったから。
その後でタオルを渡して体を拭いてパンツを履きなさいって言ったら
自分の体じゃなくってお互いの体を拭き始めて、パンツの履かせっこを始めちゃって、
あの頃からちっとも変わってないんだから……」

「俺、もう寝る……」

 毒気を抜かれた大助が言った。

「俺も……おばさん、宿題はちゃんと終わったから」

 二人は、お母さんを追い出すとパジャマに着替えてパチンと電気を消した。

「オネショすんなよ」

「お前こそな」

 次の朝、大助は無事に何事もない朝を迎えていたが、友也は違った。

「ほらほら、幼稚園の頃からちっとも変わってないんだからな友也くんは。
お兄ちゃんがパンツ替えてあげるからね……」

 大助は仕返しとばかりに友也のパンツを替えてやろうと手を伸ばした。

 ただ、染みは黄色くなくって白かったのだが。

「なあ、大助?」

「なんだ?」

「いつも寝坊のお前が、早くに起きてたのは?何で寝た時と違うパジャマ着てるんだ?」

「そ、それは……」

「俺が気が付かないとでも思ったのか?」

 あーあ、今回の失敗も仲良く一緒。

 二人してどんな夢を見たのやら。
 
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