半ズボンは夏の季語っ!冬だけど

2005/03/24UP


 半ズボンは格好悪いと思う。
 今風のハーフパンツじゃなくって股下が2、3センチしかないやつ。
 少なくとも5年生の俺が穿くような代物じゃない。

 クラスで1人だけ穿いてる奴がいるんだけどやっぱり格好悪い。
 下着だってトランクスだと下から見えちゃうからブリーフなんだ。
 それも真っ白の。
 いや、真っ白じゃないな。
 ちんこの所が黄色くて、びろ〜んってなってんの。
 だから俺らは「キバミ」って呼んでる。

 俺は半ズボンなんか嫌いだっ。
 
 なのになんでこんなもんを穿く破目になっちまったんだろう。

 *****

 歩いて30分ぐらいのところにある親戚のおばさんの家にお使いに
 行ったんだ。
 届け物。
 うちの母ちゃんが古くなった服をリフォームしたやつ。
 面倒なんだけど行くとお小遣いをくれるおばさんだから。

 20分ぐらい歩いたら雨が降ってきてさあ。
 走ったんだけどもうずぶ濡れ。

 おばさんの家でお風呂に入らせてもらった。

「ごめんねぇ、シャツとズボンはうちの子が昔着てたのがあったんだけど」

 そう言いながら出してくれたのは古びた半袖シャツと半ズボン。

 パンツは無い。

「家までだけだから下は穿かなくても大丈夫よね。男の子だし」

 少し嫌そうな顔をしてる俺を見ておばさんは続ける。

「やあねえ、ズボンの下って意味よ」

 でも、半ズボンってのはちょっと・・・かなり嫌。

「ブルマならあるんだけど男の子だし嫌よね?」

 俺は自分のブルマ姿を想像した。
 うわ〜っ、格好悪いを通り越して変態っぽい。

 *****

 という訳で俺はノーパンに半ズボンという情けない格好で歩いている。

 げっ、向こうからクラスの山田と竹中が歩いてきやがる。
 よりによって放送屋コンビかよ。
 
「お〜っ、半ズボン少年発見!」

「悪いかよ。雨で他に着るもんがなかったんだよ」

「いや、ふとももが素敵っ!ヘンなおじさんにモテモテ間違いなしっ」

「嬉しくねェっ!」

「しかもパンツを穿いてないっ!」

 山田が下から覗き込む。

「見んなよっ、変態かお前は」

「いや、いや変態ならそっちが上手でしょ。寒いのに半袖半ズボン、 しかもノーパンっ」

「パンツが無かったんだよっ」

 竹中がケータイのカメラをこっちに向ける。

 自棄だ。

 俺はセクシーポーズで写ってやった。
 それなら冗談で通じるだろうと思って。

「クスクス・・・」

 小さな笑い声が聞こえた。
 
 うわっ。

 なんで野中がここにいんだよッ。
 
 野中博美、クラスで否、学年で一番可愛い女子だ。
 俺もちょっと憧れてる。

「里見くん元気だね。冬でも半袖、半ズボン」

 そう言い残すと足早に去って行った。

「なあ、里見っ!」

 山田と竹中がガシっと俺の肩を掴む。

「そのズボン貸してくれっ!」

 俺はちょっとだけ優越感を感じた。
 
 *****

 翌日、風邪を引いて学校を休んだ。

 やっぱり半ズボンは嫌いだ。

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