大切なひと

2010/02/06UP

(解説)
『サマーウォーズ』のパロディ。
ネタ自体は公開中に考えてたんですが書くのに時間が掛かりました。
劇場で4回観ました。


「か~ずまく~ん」

夏希姉が後ろから抱き付いて来る。

顔がちょっと熱くなる。

ずっと弟扱いされてるのは分かってる。
こっちだって親戚のお姉さんとしか思ってない。
だけどやっぱり女の人に抱きつかれるのは恥ずかしい。


「相変わらず細っこいね。駄目だよ、もっと食べなきゃ」

翔太兄と健二さんが複雑そうな表情で見てる。
健二さんは夏希姉にベタ惚れされてるけど少し自信が無いみたい。
翔太兄は翔太兄で未だに少し未練があるらしい。

夏希姉は無邪気に破壊力抜群の台詞を繰り出した。

「彼女ぐらいできた?妹以外に」

どぎまぎする。

「ま、まだ早いよ。自分だって健二さんとは去年からの癖に」

夏希姉はズボンの上から股間を軽く叩きながら言った。

「そうねまだ生えてないような歳だもんね」

うわっ。

「や、やめてよ」

こんな下品な人だったっけ?

夏希姉はこっちの心の中を見透かしたように言った。

「あら、佳主馬だってこんなに可愛かったっけ?」

顔が思いっきり真っ赤になった。


大事な人は大勢いる。

お母さんにお父さんに妹。

そして夏希姉と健二さん。

他にも何人かいる。

好きかどうかって問われれば好きなんだと思う。

ちょっと健二さんにお願い。

「どうしても?」

戸惑ったような表情。

「どうしても!」

ここは強く主張してみる。

「なんでまた急にそんなこと」

「急にじゃなくってずっと思ってた」

「なんかちょっと恥ずかしくない?」

「親密になる為には必要なの!」

「じゃあ・・・」

よし決まり。
じゃあっと。

「健二兄ちゃん!」

「そ、それはちょっと破壊力あるから、せめて健二兄にして」

 呼び方がが変わった。

 ふざけて

「お兄ちゃん」

 と呼んでみる。

「佳主馬、その呼び方はやめろって」


 ほのぼのとした光景を眺めていた篠原夏希は言葉を口に出した。

「なんか明るくなったよね、佳主馬。なんかあったのかな?」

近くに立っている又従兄の陣内翔太がそれに応える。

「さあな、好きな人でもできたんじゃねえの」

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