巨大少年の憂鬱

2010/02/10執筆
2010/03/03 UP

(解説)
「とらじまねこ」さん贈る予定が書き始めて数年間放置されていたもの。
強引に書き上げたものの完成度としては問題があるかも。



気が付くと怪獣になっていた。

僕はミニチュアワールドのような街に佇んで途方に暮れていた。

模型では有り得ないリアル感。

小さな人が右往左往している。

その様子をポカンとして眺めていてもどうしていいのか分からない。

夢?

夢オチであってくれればどれだけ幸せだったろうか。

僕は小人達の中に僕を見付けた。

場所は僕の家。

窓から覗き込む僕を見て怯えている。

そう僕も怯えていた。

僕は怪獣に潰された。

だから僕は僕を潰すんだと思う。

被害は最小限に抑えなくちゃ。

壊すのは僕の家だけ。

げし。

ぷち。

ああああああああああああっ、ぼ、僕が、僕が

違う。

こんなシチュエーションじゃなかった。

誰かに跳び蹴りをされた。

それで、僕は、僕は、前に突っ伏して僕を

振り返る。

「こら、駄目じゃないか街を壊しちゃ」

記憶に無いレオタードのようなピッチリとした衣装を身に纏った男の子。

中学生ぐらい?いや、もっと幼いかも。

全体的に青い。

頭に猫耳。

走って来たであろう痕跡がハッキリと分かる。

街が見事に破壊されているから。

ヒーローなんだろうか?

そういや、テレビの巨大ヒーローも街を平気で破壊していた気がする。

「聞いてる?」

青い男の子はイライラしたように近くのビルを踵で踏み潰す。

「君には言われたくない!」

そう言いながら彼に向き直る。

ガラガラと何かが崩れる音がした。

しっぽ、そう尻尾だ。

忘れてた。

今の僕には尻尾があるんだ。

しかも僕の声は言葉にならない。

ガウガウとしか聞こえない。

「ほら、また潰した」

そう言いながらこっちに歩いて来ようとしてトラックを踏んで転倒する。

「ガウガウガウ
(自分の方が壊してるじゃないか!)」

尻餅をついて大股を広げている男の子にそう言ってみる。

もしかすると通じるかもしれないと思って。

「よくもやったな〜っ」

だ、だめだこいつ。
頭に血が上ってる。

こうして逆上して街を破壊するヒーローから必死で人々を護ろうとする怪獣という不可思議な光景が展開されたのだった。

流石にヒーローは強い。

が、僕は逆転の秘策を発見した。

男の子はぴっちりとした防御力の低そうな格好。

僕は全身着ぐるみ状態。

そして尻尾。

思いっきりスイングしてお尻に叩きつける。

何度も何度も。

弟のお尻をペンペンしてる気分だった。

彼が泣いて謝ったのかどうかは分からない。

だって、僕は見つけてしまったんだ。

成り行きを呆然と眺める小人達の中に僕の姿を。

僕は生き残ったらしい。

カチッ

何かが切り替わった音。

僕は、巨大な少年を見上げていた。

痛そうにお尻をさすっている。

「何があったんですか?」

周りの人に尋ねてみる。

「さあ?」

誰もどうしてこうなったのか覚えていない。

翌日、優等生の筈のクラスメートが誰かにおしおきされたとか言ってお尻を気にしてた。

まさかね・・・

 TOPへ戻る