裏の家の洗濯物

2010/04/13UP


アパートの裏の家には子供が住んでいるらしい。

顔は見たことがない。

名前も年齢も知らない。

だが俺は彼の重大な秘密を知っている。

どうやら、おねしょが治っていないらしい。

毎日のように洗濯物が干してある家だった。

晴れてなくても屋根付きの物干し台にシャツやらタオルやらが干してある。

晴れていれば布団が干されている。

基本、夜勤の俺は部屋の中にロープを張って干しているから布団までは干せない。

たまにシーツを洗ってコインランドリーの乾燥機で乾かしてくる程度。

布団の本体も洗いたいんだけど、洗おう洗おうと思っているだけだ。

とある休日の朝、ふっと目が覚めた。

叫び声が聞こえた。

「ごめんなさ〜い!」

小学生ぐらいの男の子の声。

続いて、バシッバシッっと叩く音。

児童虐待?

一瞬そう思って耳をすましてみた。

特に何も聞こえない。

それから何となく気にしてたけど忘れてた。

翌朝。

「こら、また〜っ!」

ちょっと、おばあさんっぽい声がした。

「ごめんなさ〜い!」

小学生ぐらいの男の子の声。

続いて、バシッバシッっと叩く音。

ぽんと手を叩きたい気分だった。

頭の上で電球が灯っていたかもしれない。

そうか、おねしょだ。

昼前、コンビニに行く前に少し注意して観察したらタオルだと思ってた洗濯物は、いわゆる「おねしょシーツ」ってやつらしかった。

それ以来、裏の家の洗濯物を見るたびに顔が少しニヤけてしまう。

お祭りか何かで半被を着た小学生の集団に遭遇したこともある。

6年生ぐらいの男の子が1人で1年生ぐらいの男の子が5人くらい。

ちょっと偉そうに小さい子に対して大人ぶってる姿が可愛かったけど多分あの子なんだろうなあっと思うと笑いを堪えるのが大変だった。

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