ぼうけんき
第2話中編『エロリン道中』

2005/05/03UP・2010/05/24修正


ルンルンルンっ!

「俺っ、お宝を持って帰って姫様に頭を撫でてもらうんだ」

「アインの再生能力って凄いね」

ドーリーが呆れたようにツヴァイに囁きかける。

「張り切るのは結構だけど静かにしてないと山賊とか出てくるぞ」

「ふふふん、このアイン様の愛剣の錆にしてくれるっ!」

グレートソードを鞘から出して振り回そうとするが完全に重さに負けている。

「木剣の素振りしかやってない癖に」

「一番、戦力にならないのってアインだよね。魔法も使えないし」

ガサッ。

出てきた物は3匹の野犬。



「アインが役立たずだということはよく分かった」

「なんで、ツヴァイの方が剣を巧く使えるんだろ?」

当のアインは野犬にお尻を噛まれて唸っている。

泣いていないだけマシか。

「・・・」
「・・・」

「このまま帰ったら怒られるだろうな」

ツヴァイは荷物からアインのズボンとパンツを取り出す。

「少なくとも騎士団はクビだろうな・・・なんとなならない?」

「・・・素振りでもしてる」

自分でもこれほど弱いとは思っていなかったらしい。

「そうしてくれ。あっズボンの換えはもう無いからな。今度破いたらフルチンで泣きながら帰ることになるぞ」

とぼとぼ。

「予想以上にダメダメだな」

「ああ、やるか!」

少年達の後をつけていた男達は動くことにしたようだ。

悔しそうな涙目で必死に素振りするアインを見詰めながらドーリーが首を傾げる。

「ねえ、なんでアインの着替えなんか持ってたの?」

調理する為に焚き火を用意していたツヴァイが答える。

「絶対に自分じゃ忘れてるから。アインとパンツの使いまわしするの嫌だし」

「あはは、ツヴァイって結局はアインの世話を焼くよね」

「・・・洞窟まで遠いな・・・食料持つかな?」

「用意して来なかったの?」

「いや、なんかアインが自棄でドカ食いしそうな気がする」

「そうだっ!ぼくがアインと狩りしてくるよ」

その女の子のような容姿から忘れられることが多いが彼はドルイド僧の出身。
森からの恵みを得る術は得意としていた。

数十分後。

「はくしょんっ!」

「まさか、ドーリーが川に落ちるとは思わなかった。落ちるのならアインだと」

「ふふふん。今回は俺の勝ちっ!」

慣れた手つきで鹿を解体しながらアインは言った。
こいつ、街の出身だった筈なのに。

勝ち誇った顔でドーリーを見て赤面する。

外見は少女の少年。
濡れた体。
震える裸体。

「責任とってよね!」

物凄い形相で睨みつけられてアインはたじろぐ。

「せ、責任とれって言われても、お、俺には姫様という心に決めた人が」

この世界において戸籍管理や入籍という法律は整備されていない。
即ち、法律的な意味での婚姻という制度は存在しない。
従って、異種族間だろうが同性間だろうが本人と周囲が納得すれば結婚可能。

「アインだけはやめとけ」

震えるドーリーに温かいシチューを差し出しながらツヴァイが言った。

「独り占めはズルイ。ぼくもアインと寝る」

「俺がツヴァイと寝てるような言い方はやめろっ!」

「寝てるもん。いつもツヴァイがアインを抱きしめてるの知ってるもん」

妙な視線がツヴァイに向けられる。

「くしゅっ」

「ほらほら、バカ言ってないで体を温めないと」

「だから、アインと寝る。一緒のベッドなのにいっつもぼくだけ蹴り落とされるんだもん」

顔を見合わせるアインとツヴァイ。

寝袋を用意するドーリー。

「・・・アイン、一緒に入ってやれよ」

「嫌だよ。狭っ苦しい」

「くしゅっ」

「アインっ!ドーリーが倒れたら回復役がいなくなるんだぞ」

「分かった・・・でもツヴァイって、いつも俺を抱きしめてるんだ・・・」

ツヴァイの顔が赤くなる。

「く、癖だよ。ドーリーは寝てる時に触ると嫌がるし」

ゴソゴソ。

「やっぱり、アインは体温が高いや。子供の体温が高いってホントだね」

「体をベタベタ触るなっ!それに俺の方が年上だ!」

寝袋の中で密着体勢の二人。

ふう。

溜息をつきながらツヴァイは別のことが気になっていた。
アインが仕留めた鹿。
含み針が突き刺さっている。
アインもドーリーも使わない武器だ。

夜中。

ぽいっ。

アインがドーリーの寝袋から放り出される。

「ふに?」

例によってアインは寝惚けている。

行き掛かり上寝ずの番を勤めていたツヴァイが声を掛ける。

「起きて見張りを交代してよ」

「ふにゅう・・・ぐーぐー」

「もうっ!水でもぶっかけてやろうかな?」

ニヤリ。

ツヴァイはちょっとした悪戯を思いついた。

「≧Ν÷〇☆〆・・・」

初歩的な冷気の魔法。
唱えると少しだけ温度が下がる。
地面にノビてなお眠り続けるアインのズボンにチョロチョロと冷やした水を零す。

「うひゃっ!」

「アイン・・・ドーリー怒ってたよ」

「なんで?」

まだ少し眠ってるアインには何のことか分からない。

「なんでって・・・寝袋の中でおねしょなんかするから」

「してねえって」

「じゃあ、その濡れたズボンは?」

「・・・・・・俺、やっちゃった?しかもドーリーの寝袋で?」

ぷぷぷっ。

ツヴァイが笑い転げる。

「あははははっ、まだおねしょしてるって自覚はあるんだ」

「あ〜っ!!さてはハメやがったな」

「だって起きないんだもん。朝まで寝ずの番よろしく。寝たらお師匠様に言い付けるからね」

反論する暇を与えず自分の寝袋に潜り込む。

焚き火に向かったアインはあることに気付く。

「あ、着替え・・・」

ズボンもパンツも昼間破いたので今穿いているので最後だ。

幸い辺りに人の気配は無い。

ゴソゴソと脱いで両手で広げて火にかざす。

「ううっ、本当に漏らして乾かしてるみたい。情けねえ」



朝。

柔らかな光が頬を撫でる。

「くーくー」

やっぱりアインは眠ってしまった。

「うわっ〜!」

下半身の冷たさに目を覚ます。
折角、乾かして生乾きを我慢して穿いたズボンとパンツが盛大に濡れている。

「なんで、なんで?」

頼みの焚き火はすっかり消えて煙だけがたなびいている。

「ど、どうしよ、どうしよ」

寝ずの番で寝てしまった上に盛大なおねしょだ。
恥ずかしいやら、申し訳ないやら、おしおきが怖いやら。

「クククククっ」

寝袋の中で眠っている筈のツヴァイが笑いを押し殺している。

 はっ。

「ツヴァイっ!」

「あははははは、どうして何度も引っ掛かるかなアインは」

「何度も何度も性質の悪い冗談をやるなあっ」

「いや、今回は僕じゃなくってドーリーだよ」

「くそっ!・・・ドーリーっ、どうしてくれるんだよ。替えのズボン無いんだぞ俺っ」

 ドーリーは笑いながら自分の荷物の中からパンツとズボンを差し出す。

「乾くまで貸してあげる」

アインはそのパンツを見て目を白黒させる。

「うわ、派手。それに穴が開いてないけどどうやっておしっこするんだ?本当に男物か?」

「格好いいでしょ、ぼくのお気になんだから大事に穿いてよね」

「ごめん、悪いけどドーリーの趣味ってよく分からない」

三人は出発した。

ツヴァイとドーリーが肩に渡した竿には昨日、仕留めた鹿を吊るして。
アインの持った竿にはパンツを旗のように干して。

「・・・冒険者っていうよりは冒険ごっこをしてる悪ガキトリオって感じだな」
 
こっそりと後に続く男達は苦笑した。

そんなこんなの珍道中。
目的の洞窟が見えたのは翌々日のことだった。



「えいっ、えいっ!!」

素振りに励む黒髪の少年。
かなり重い筈のグレートソードを軽々と振り回していたりはしない。
やっぱり重さに負けている。
そもそも大男でもないと扱えないような武器なのだ。
軽々と扱えるツヴァイの方が変だ。

「あ〜い〜ん〜、ご飯ができたよ〜っ」

小走りで呼びに来る金髪碧眼の美少女・・・いや少年。

構図だけはまるでカップル。

アインは素振りに励み、時々ツヴァイを相手に模擬戦闘をやっている。
そのツヴァイは主に食事の準備。
そしてドーリーは森で食料の調達。
それが野営の時の行動パターンだった。

「・・・アイン、やっぱり露出狂なのな」

 カップルで戻ってきたアインを見てツヴァイが洩らす。

「え〜っ、似合ってるよ〜っ!」

ドーリーが庇うが彼の意見はあまり参考にならない。

義理の母でもある3人の師匠に年齢と容姿を無視したメイド服をプレゼントするようなセンスの持ち主である。

更にいうならアインの今の格好はドーリーが貸しているものだ。

「ちょ、ちょっと汗が気持ち悪いんだけどこの方がいいってドーリーが」

「上半身裸なのは許そう、パンツだけでも穿いているのは進化だと思う、・・・でもそのパンツ・・・」

真っ黒に染色されたテカテカ光る獣の皮で作られた足を長く見せ、へそが全く隠れない小さな下着。
 それが汗でじっとりと湿った身体にピッタリと張り付いている。

変態レベルが上がる前に2人をなんとかしないといけない。

ツヴァイは心の中でしっかりと決意した。

自分が面倒だからと素肌にエプロンだけという格好で鍋を掻き回していたことは忘れて。

明日は遂にダンジョンに潜る。



「ふふふっ、装備を全部外して置いて行って貰おうか」

如何にも山賊という風情の山賊が5人、洞窟に入ろうとしていた3人組の前に立ちはだかる。

「え〜っ、また、素っ裸で冒険すんの〜っ?」

アインが抗議の声をあげる。

「いや、もしか・・・しなくても山賊さんなんじゃないの?」

ドーリーがおずおずと言う。

「ドーリーも違う。この人達はずっと僕達を護衛してくれてた人達だよ、どうもお世話になりました」

ツヴァイが丁寧に頭を下げる。

「じゃあ、実は善い人?思いっきり悪人顔してるのに」

「ドーリー失礼だぞ、アインが倒す前に鹿に吹き矢を打ち込んでくれたり、寝ずの番をしてくれたりしてたのに」

「ふふふっ、それはこの場所で襲う為だ、ここなら逃げられないし、助けも来ない」

「質問!そこまで手間掛けて採算合うの?僕らロクな装備持ってないよ」

「ふふふっ、そのガキが拝領した魔剣だけでも大したもんだし、お前等を売り飛ばせばもっと利益があがる」

「魔剣だったんだ・・・」

「魔剣、使って野犬に勝てないアインって・・・」

「うるさい、うるさい!」

「ふふふっ、という訳で覚悟してもらおう」

「質問!必ずふふふって言うのは何故ですか?」

「ふふふっ、やかましい」

戦闘開始。

山賊のひとりがリングのような物を投げる。

がちゃり、がちゃり、がちゃり。

3人の首に命中する。

「ふふふっ、奴隷の首輪って知ってるか?命令に逆らえなくなる魔法のアイテムだ」

いきなり反則アイテムを使われて戦闘は3人の負け。

「ふふふっ、まずはお前等の具合でも試そうかな?」

「また、首輪〜っ!俺もうヤだ」

「アイン、ヒモで繋がれてないだけマシだよ」

「そうそう、犬小屋にも入れられてないし」

別に魔法の首輪なんて使わなくてもお師匠様は奴隷以上に服従させているような気がする。

ごそごそ。

ズボンを脱ぎかけていた山賊を別の山賊が制止する。

「中古にしない方が高く売れるからやめろ」

「・・・でもこいつら既に中古の可能性が・・・」

「ちょっと調べてみるか、3人共下着を脱いで尻を突き出せ!」

命令に反応して直立不動の体制だった3人はズボンを脱ぎ始める。
 
「か、体が勝手に動く・・・」

「魔法のアイテムだからなあ」

「ふえ〜ん、毎回のように脱がされてる気がする」

極端に布地の少ない黒い皮のパンツのドーリー、一部が少し黄色くなった白いパンツのアイン。

そして、ドーリーの穿いているものよりやや布の少ない桃色のパンツのツヴァイ。

「・・・ツヴァイ、お前、他人の趣味を言えないぞ」

「ちょ、ちょっと興味があってドーリーのを・・・」

「ぼくの勝負パンツなのにっ!」

何の勝負をするつもりだドーリー。

「さっさと脱げっ!脱いだらコレを挿れてやるからな」

山賊は丸い卵のようなものを懐から取り出した。

「淫獣の卵だ、これさえ体内に挿れておけば立派な性奴隷になれるからな」

淫獣の卵。
これも貴重な魔法のアイテムだ。
男女を問わず肛門から挿入されるそれは犠牲者の体内で孵化する。
だがその姿を見たものはいない。
それは犠牲者と一体化するからだ。
そして主人の命令に従い快楽神経を刺激する。

奴隷の首輪の効果で体が自由に動かせない3人の少年は山賊に命じられるままお尻を突き出す。

「ふむ・・・新品みたいだな。こいつらの師匠も弟子に手を出してはいないってことか」

「当たり前だろっ!お師匠様はあれでも優しい人なんだから」

殆ど毎日のようにおしおきされている筈のアインが叫ぶ。

「優しくて、強くて、頭が良くって、美人で・・・」

と更に続ける。

「アインって凄いな」

「あれだけ酷い目に逢わされてるのに・・・」

ツヴァイとドーリーが下半身裸でお尻を突き出したままで囁き合う。

「・・・来ない」

アインが落胆したように呟いた。

「これだけ誉めれば、絶対に高い所から笑いながら現れると思ったのに」

「当たり前だ、お前らの師匠に邪魔されたくないからこんな山奥まで待ったんだからな」

「さあ、自分で挿れな」

卵を手渡されたアインの手は自らの意思に反してそれを肛門に押し当てる。

ぐぐっ。

「や、やだよ、こんなの・・・」

ぐいぐい。

「ひっ、や、やだあー」

自らの手で窄まりを押し広げて異物を入れる気持ち悪さ。
そしてそれを2人の少年と5人の山賊、合計14もの瞳に凝視されているという恥辱。

ぷちゅっ、ぐいぐいぐい。

淫獣の卵はアインのお尻の穴に入り込み見えなくなった。

「ほら、お前らも見てないで自分で挿れな」

ツヴァイとドーリーにも手渡される。

首輪の魔力で意思に反して身体が動かされる。

「な、なんか熱いよお」

にゅるっ。

「わっ?な、なんだ?」

アインに尻尾が生えた。

ふさふさの毛が生えたキツネのような尻尾。

「お前、どういう体質してるんだ?こんな反応するわけがないのに」

ぐしゃっ。

ツヴァイとドーリーがお尻に押し付けていた卵が崩れるように割れる。

がしゃん。

そして3人の首輪が勝手に外れて地面に落ちる。

アインは呆気に取られている山賊から魔剣をひったくると信じられないような速度で殴り倒す。

げし、げし、げし、げし。

秒殺。

1分も経たずに5人の山賊が退治される。

「今のうちに洞窟の中へ!」

荷物と服を手早く拾って駆け出すアイン。

「な、なにが起こったんだ?」

「さあ、アインが役に立つ筈が無いのに・・・」

ツヴァイとドーリーは首を傾げながら、尻尾をぴょこぴょこさせているアインに続いた。

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