ぼうけんき
第6話前編『ドーリーの初恋?』
2005/07/02UP・2010/04・25修正
RPGのようなファンタジーの世界。
そこに3人のショタっ子がおりました。
それは冒険者ですらない彼らの無軌道な冒険の物語。
さて前回で、女の子に強制性転換させられちゃったアインですが・・・
ずかずかずか。
「ちっ、逃げられたか」
「姫様、お言葉使いがちょっと・・・」
「私の大事なアインを女の子にしちゃうなんて国家反逆罪だと思わない?」
その頃、4人は温泉宿に逗留していた。
「≧Ν÷〇☆〆・・・」
ぽしゅっ
アインは必死に呪文を唱えるが何も起こらない。
「発音は正しいんだけど、精神力が巧く乗ってないんだよ」
大きなシャツに大きなパンツというゆったりとした格好でくつろいでいるツヴァイが注意する。
「もっと結果をイメージするんだよ、アインってもしかして元に戻りたくないの?」
大きなパンツだけで上半身裸のドーリーも同調する。
リラックスしすぎていてウサギ耳と角が飛び出している。きっとお尻には丸い尻尾もあるであろう。
「まあ、焦らずにやるんだな。それよりまた風呂に入りにいかんか?」
お師匠様は布を巻き付けただけの煽情的な格好をしている。
ちなみにアインは、可愛いからという理由でピンクのブラウスとスカートを穿かされている。
「お義母さん、嬉しいんだ」
「今までは1人でお風呂に入ってたからなあ」
「今度は2人も一緒に入るか?」
お師匠様はツヴァイとドーリーと怪しい目で見ると邪悪な微笑みを浮かべた。
考えてみれば家庭の風呂で男女別浴に拘る必要は薄いように思える。
なのだが、何故かお師匠様はそういうことに五月蝿いのだ。
ましてや、ここは公衆の浴場である。
従って、ツヴァイとドーリーを女湯に入れようと思えば女の子に変える必要がある。
「ツヴァイもドーリーもアインと違って呪文は唱えられるんだから問題あるまい」
お師匠様は言うが早いか呪文を唱える。
「≧Ν÷〇☆〆・・・」
一瞬の沈黙。
「≧Ν÷〇☆〆・・・」
「≧Ν÷〇☆〆・・・」
「ズルイっ!ツヴァイもドーリーもすぐに戻ってる!!」
コツン。
「アインもさっさと男に戻らないと時間切れになるぞ」
「時間切れ?」
「ああ、性別を変えたままで長時間経過すると変えた性に固定されてしまうんだ」
「いっ?」
「多分、明日まで持たないと思うぞ・・・まあ私は別に困らないし・・・」
「そーいうことは、もっと早く言ってください!」
「まあ、頑張って練習するんだな・・・2人は?」
「とっくに逃げました」
「なあ、お師匠様、ハジけてない?」
ツヴァイは広げていた翼を畳むと抱えていたドーリーを放す。
「物凄くはしゃいでるね・・・女湯惜しかったかな?」
「まさかとは思うんだけど・・・」
「なに?」
「姫様にアインを取られたくないんじゃないかな?」
「ところでさ・・・あんまり大きなパンツってのも考えもんだね」
上半身裸の金髪少年と下半身裸の赤毛少年。
その50メートル程手前の女湯では見知らぬおばちゃんが上空からヒラヒラと落ちてきたパンツに悩んでいた。
「≧Ν÷〇☆〆・・・」
遠くで呪文が聞こえた気がした。
「あ、あれ?」
「ここは?」
ツヴァイとドーリーは素っ裸で女湯に突っ立っていた。
「召還魔法ぐらい知ってるだろ?今は召還獣が混じってるから特に呼びやすい。
もっとも、本体しか呼べないという欠点はあるんだが」
お師匠様の傍らでは、まだ女の子なアインが必死の顔でで呪文の練習をしている。
女湯に男の子、それも尻尾や耳や羽根が付いていれば相当に目立つ。
ちなみにアインは尻尾も耳も飛び出させていない。
というよりは半ば封印状態なので出せないのだ。
「どうしてそう問題ばかり起こすんだ?上から覗いたって苦情が来たぞ」
お師匠様はツヴァイが落としたパンツをヒラヒラさせる。
「しかも、物証を残すし・・・」
「僕らは覗いてなんかいません!」
「そうそう、単に上を通っただけで」
「苦情が来た以上は対処しないといかん。今日は1日女湯で背中流しをすることになったからよろしく・・・あ、男湯はいいそうだから、色々と危なそうだし」
じっ。
「手やタオルで隠しちゃダメだぞ。ちゃんと見られる恥ずかしさを実感させますって条件なんだから」
お師匠様は既に行列を作りかけているおばさんの群れを振り返った。
「じっくりと見ていただいて結構ですが、触れないでやってくださいね」
どっと笑い声が起きる。
「・・・お師匠様・・・着痩せするタイプだったんですね・・・」
ツヴァイは始めて見るお師匠様の裸に見とれている。
早くに母親を亡くした彼は女性の裸を見る機会が殆どなかったのだ。
ドーリーはドーリーでウサギ耳を子供に引っ張られたりしている。
「じゃあ、頑張って背中流しをよろしく」
「疲れた・・・」
ツヴァイはぐったりとノビてしまっていた。
コチョコチョ
アインがキツネ尻尾の先でくすぐる。
「僕、相手する気力ないから・・・」
「ちゃんと呪文を唱えられるようになったし、尻尾や耳も出し入れ自在になったのに」
「・・・おばちゃん達に笑われまくりながら熱い場所で力仕事してみろよ」
「覗いたりするからだよ」
「覗いてないって」
「それより、ドーリーは?」
「ドーリーは見かけの割にタフだからなあ・・・なんか犬耳の女の子をナンパしてた」
※酉さんちの看板キャラであるタオちんをお借りしました。
「≧Ν÷〇☆〆・・・」
ドーリーはこっそりと呪文を唱えた。
疲労回復の魔法。
ツヴァイにも唱えてあげたいのだがまだ魔法力が足りないので1人分で精一杯。
「わ〜い、ウサギさんだあ!」
トテトテと走ってくるちょっと女顔の男の子。
犬族の獣人だ。
いや、男の子じゃない。
お風呂場で背中を流してあげた。
女の子だ。
ドーリーは少し顔を赤くした。
(あの子、犬耳っていうのがあるから男の子みたいに見えるんだよね。
可愛い顔してるのに・・・
・・・ぼくもウサ耳だと女の子みたいに見えるのかな?)
あまり自分が女顔の美少年だという自覚の無いドーリーであった。
ドーリーにしてみればポニーテールだった頃のツヴァイの方がよっぽど女顔なのだ。
ポテ
「あ、大丈夫?≧Ν÷〇☆〆・・・」
回復呪文。
擦り剥いた傷ぐらいなら大した魔法力は消費しない。
「魔法が使えるんだ!凄いね!!」
少し赤かったドーリーが更に赤くなる。
「あ、あのさ、よかったら・・・遊ばない?」
保護者らしい男と一緒に立ち去っていく少女をドーリーはずっと見送っていた。
「タオちゃんか・・・」
ドーリーはそっとウサ耳を押さえた。
まだ、タオと名乗った女の子の指の温もりが残っているような気がした。
「でも、気になること言ったな。温泉を沸かしているは竜だって」
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歩き始めたドーリーはまたもや顔を赤くする。
「あっ・・・ぼく、ずっとパンツいっちょで・・・」
考えてみればお風呂場で素っ裸も見られていた筈。
ポテ
ドーリーは頭が沸騰して倒れた。 |