2007/10/30

晩 秋


 秋のGT路線真っ只中ですが、新しいスターが次々と現れています。
スプリンターズS (アストンマーチャン 中舘J)
秋華賞      (ダイワスカーレット 安藤J)
菊花賞      (アサクサキングス 四位J)
天皇賞      (メイショウサムソン 武豊J)
どのレースをとっても素晴らしい競馬を見せてくれました。今週は1週間GUとGVの競馬を見ていただき、翌週から「エリザベス女王杯」・「マイルチャンピオンシップ」・「ジャパンカップダート」・「ジャパンカップ」・「阪神ジュベナイルフィリーズ」・「朝日杯フューチュリティステークス」、5週間にGT競走が6レース行われます。
競馬ファンにとっては目が離せない5週間になり、ファイナルレースではファン投票で選ばれた馬達が競う「有馬記念」で今年のJRA日本中央競馬の全日程が終了します。
これから皆さんにとっても忙しい時期になると思いますが、現場にお越し頂いて競馬をライブで楽しみ大きな声援を送って頂けることを、競馬サークルの一員として心からお待ち申し上げます。

 さて、当厩舎も後半戦に向けて努力しているところですが、以前にも紹介した通り、夏季開催が終了後のこの時期はどうしても新馬との入れ替えで戦力も低下することは否めません。それに伴い出走回数も減少していますが、そんな中で成績を上げていくには色々な要素が要求されます。
スタッフには何が重要かと言うことを日々伝えていますが、馬の能力も勿論重要な要素として考えています。与えられた仕事を流れ作業的にこなすだけではなく、その馬の持っている能力をいかに競馬で活かせるかと言うことを考えて、各職種ごとの仕事をしてもらっています。
エリモハリアーの函館記念、オリエンタルロックの札幌2歳ステークス制覇、両馬とも低評価の中で彼らの持っている力を十分発揮してくれました。
勿論、彼らを担当している厩務員も与えられた仕事をこなした結果が表れた瞬間でもありました。

 エリモハリアーは12月9日(日)に香港で行われるキャセイパシフィック香港国際競走、「香港カップ(GT2000m芝)」と「香港ヴァース(GT2400m芝)」にエントリーしています。今日現在、まだ選考結果は届いていませんが、検疫国際厩舎へ入る用意をしているところです。
オリエンタルロックは11月17日(土)に東京競馬場で行われる「東京スポーツ杯2歳ステークス(JpnV1800m芝)」を予定しています。
2歳ですでに勝ち上がっているグラーフ(牝)は、京都競馬での「黄菊賞 1800m芝」から中央場所での始動で、現在最終調整に入っています。
古馬の中では引退したトウカイカムカムの妹でトウカイルナがようやく力を出してくれました。前走では終いの脚に徹したレースが功を奏し2着に来てくれました。16番人気での入着で高配当の片棒を担いだ形になりましたが・・・。

 新規に入厩した2歳馬達も順調に調整が進みゲート試験にも合格しました。これから本格的な調教メニューが待っていますが、彼等も一生懸命毎日の調教に汗を流しています。1ヶ月後くらいにはデビューできる予定ですが、
出馬表に馬名が出た時には競馬場で応援していただければと思います。
10月31日に誕生日を迎える調教師から、今後も引き続き当厩舎の応援をお願いいたします。


2007/10/12

退厩と入厩


 キンモクセイの香りが漂い、雲一つなくどこまでも続く青い空。15℃を表示する温度計の側で栗東トレセンでは秋を感じながら調教を行っています。

 この時期は清々しい気持ちで仕事ができる季節ですが、馬の入退厩も多く慌ただしい時期でもあります。来年の繁殖を見据えた牝馬達や、能力を発揮できないまま抹消されていく各馬と、新規に入厩してくる馬達との入れ替えで各厩舎も馬房調整に取り組んでいます。
抹消されていく馬には色々なドラマがありますが、能力的な限界で引退する馬や、期待されながら故障等で残念な思いが交差した中で惜しまれて引退する馬もおります。
 当厩舎のトウカイカムカムも屈腱炎の再発で引退を余儀なくされました。
厩舎サイドとしても大きなレースで活躍しながら、重賞競走には勝つことができず引退を余儀なくされた事は残念な思いで一杯です。
競走馬の致命傷と言われる屈腱炎の再発は仕方がないことかもしれませんが、今後はノーザンホースパークで乗馬として余生を送ります。
長期の休養と治癒は必要ですが、その後には皆さんの前に乗馬として完成された姿をお見せできると思いますので、今後も見守って頂ければ彼にとって幸せな余生と思います。
 函館記念三連覇を飾ったエリモハリアーはその後順調にレースを重ねています。前走の毎日王冠でもレコードになるほどの早いレースでしたが、ゴール前では脚色も衰えず3着に入るほどの勢いでした。
エリモハリアーはローカルでの活躍馬としての印象が強いみたいですが、中央場所でも十分活躍することを実証してくれました。
この馬は夏場に強く気温が下がってくると馬の動きに硬さがあらわれ成績も低迷しだします。しかし、今年は暖かい日が長く続いているせいか馬の動きも硬くならず出走できる状態を維持しています。
年内にもう一戦競馬への出走を考えていますが、香港での競馬も視野に入れ昨日登録をしました。選考委員会で選ばれるかどうかは未知数な面ですが、11月の発表まで調整を進めて行きたいと考えています。

 馬の入れ替えの時期には各厩舎共競馬への出走馬が少なくなりがちです。私の厩舎も小頭数の中で競馬への出走を重ねていますが、障害重賞に初挑戦を予定していたパルティアシチーが除外になってしまいました。
14頭のフルゲートに15頭の投票があり除外馬は1頭だけ出る状況でしたが、なんとその中の1頭に入ってしまいました。
前走では未勝利戦をレコード勝ちしていましたので、秘かな期待と自信を持っての投票だっただけに残念な思いは否めません。しかし、気持ちを切り替え今の好状態を維持して次走に向けた調整をして行きたいと思います。

 新規に入厩した2歳馬達も懸命に馬場での調教に汗を流しています。
入厩したばかりでどの程度の能力があるかは測りきれませんが、期待に応えてくれそうな馬達が揃った感じがします。デビューに向けての課題はまだまだ残っていますが、今後の成長が楽しみで惜しまれて引退していった馬達の分も活躍してくれそうな予感がしています。

2007/10/05

札幌2歳ステークス(GV)

オリエンタルロック(競馬ブック提供)

 先月のTC日記に残暑が厳しいと書きましたが、当厩舎も残暑に負けないくらい熱く燃えた北海道シリーズでした。函館記念をエリモハリアーで制し、札幌2歳ステークスをオリエンタルロックで優勝することができました。

ゴール前写真(競馬ブック提供) 函館競馬で武幸四郎Jを背にデビューして3戦目で未勝利戦に優勝。
果敢に挑戦した2歳ステークスでしたが、幸四郎君が落馬負傷のため騎乗することができず、急遽、鞍上を兄の武豊Jに変更して優勝することができました。
レース内容は若さが残る素振りで馬をなだめるのに苦労しながら最後方からの追走。2歳馬のレースではあまり考えられない展開でしたが、さすが名手武豊君で、3コーナーから徐々に進出し大外から内にもたれるのを矯正しながら優勝へと導いてくれました。
オリエンタルロックの力もさることながら、今回の勝利は鞍上の武豊君がよく言われる「豊マジック」を披露してくれたと感じました。

 今回の重賞制覇はオーナーはじめ私達厩舎スタッフとしても初制覇でしたが、オリエンタルロック自身の運の強さも感じさせたレースでした。
当初、落馬負傷で騎乗ができない幸四郎君に代わって豊君に騎乗依頼をしましたが、他厩舎の先約がありその時は断られました。しかし、その後の追い切りで彼の騎乗馬が回避して体が空きましたので、すぐにマネージャーに連絡し再度騎乗依頼をして今回の騎乗が決まりました。
また、前走まで騎乗していたのが弟の幸四郎君なんで、馬の癖なんかも幸四郎君から話してくれたことも勝因の一つと思いました。
 さらに、運命を感じたもう一つのこととして、この馬はセレクトセールで落札された馬ですが、私も他のオーナーの依頼を受けセリに参加していました。
最終的に棚網オーナーが落札し関東の前田厩舎に預託されることになりましたが、前田先生がその後病に倒れ残念ながら完治することなく亡くなられました。その時点で預託厩舎が空白になったわけですが、この馬を生まれた当初から見ていた事と棚網オーナーともお付き合いがあった私に預託の話が来ました。もちろん喜んでお引き受けしましたが、今回の重賞制覇は亡き前田先生の後押しもあったと感じています。
今後はクラッシック路線に乗って挑戦を続けますが、前田先生も見守ってくれると信じています。

 馬の世界ではこのような運命めいたことを時々感じます。先々週の障害戦でレコード勝ちしたパルティアシチーもある意味何らかの要素が影響したかもしれません。
この馬は障害デビューから2着を続け、休養をはさんで南井大志Jで勝つことができました。後になって気がついたことですが、種牡馬のウイングアロー、母父のナリタブライアン。ここまで書くとファンの方は分かると思いますが、彼の父で現調教師南井克巳元ジョッキーが騎乗していた馬でした。
「ただそれだけか」と言われればそれまでですが、競馬は色々なことが絡み合って結果が出るような気がします。
 パルティアシチーも飛越の巧さとセンスの良さでレコード勝ちしましたので、次走は東京競馬で行われる「東京オータムジャンプ(J・GV)ハンデ戦」に挑戦します。ウイングアローやナリタブライアンも活躍した東京競馬場で、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれることを望んでいます。

 エリモハリアーが今週の「毎日王冠(GU)」に挑戦しますが、「京都大賞典(GU)」に出走予定だったトウカイカムカムが屈腱炎の再発で引退を余儀なくされました。オーナーはじめ厩舎としても残念な結果になりましたが、これらの馬のことについては、今回の文面が多くなったので次回に紹介したいと思います。