【コラム】都市貧民の状況



 “Why are we squatters in our own country ? ”
(私たち自身の国でどうして私たちが「不法居住者」なのでしょうか?)

挿絵に書かれたフィリピン民衆の問いかけです。

 絵には三菱やフォードなど外国の大企業の看板を背景に、貧しい小屋が並んでいます。
 外国の大企業がフィリピンの各地に工場や店舗を持ち、外国資本のための道路・港湾を始めとする産業基盤が整備され、高級住宅がつくられている一方で、フィリピンの多くの民衆が自分の国で「不法居住者」と呼ばれています。

 フィリピンで膨大な都市貧民が生み出される原因はいくつもありますが、共通していることは、外国の政府や企業の利益に立った開発の結果であるということです。

 農村では、プランテーション開発のための土地取り上げ、工業化開発やエビの養殖場のための農地つぶし、「緑の革命」と呼ばれた高収量米導入による土地荒廃と環境汚染、漁村では、外国企業の大型船による乱獲、進出企業の公害による漁獲量の激減、そして、森林では、材木の乱伐による森林資源の枯渇、環境破壊、洪水や土砂崩れなどの災害等、フィリピンの農漁民が生活基盤を失い、生きる道を探して都市へと流入せざるを得ない状況が続いています。こうした人々の犠牲の上で、外国資本とフィリピンの一部の金持ち層が膨大な利益を得ています。

 都市部でも失業率40%、最低賃金では一家6人の最低生活維持に必要な費用の半分ほどにしかなりません。そしてその最低賃金すら守られていない場合が多いのです。定職に就いていてもこのような状況です。失業、半失業状態の人々の生活はもっと深刻です。

 このようにして日々の生存すら脅かされている人々がマニラ首都圏では人口の約半数にのぼると言われています。土地も持たず家賃を払う収入もない彼らの多くは、河川敷、鉄道の線路わき、海岸などの危険な場所や空き地などに粗末な小屋を建てて暮らしています。ラモス大統領の提唱する「フィリピン2000」計画の下で、急激な工業化開発のための立ち退きや、今秋のマニラAPECに向けて「都市から目障りなものを排除する」として、首都圏の美化運動とともに都市貧民地区の強制立ち退きが頻繁に行われ、多くの都市貧民が立ち退きを迫られています。

 私たちは、これらの開発と立ち退きの問題について、その中での人権侵害や、開発に関わる日本の投資や援助のありかた、立ち退きを迫られる都市貧民の状況や、立ち退き後の問題、彼らがどのようにこの問題を解決するための努力をしているのかなどに注目していきます。そして何よりも、どうしてこのような都市貧民の現実が生み出されているのか、解決のためになにができるのか、フィリピンの人々と共に考えていきたいと思います。


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