HYBRID-FANTASY A L P H E L I O N アルフェリオン

 

     

Copyright (C) 1998-2007. Hayato KAGAMI

 内乱で揺れるオーリウムに対し、「神帝」こと皇帝ゼノフォス2世に率いられ、じわじわと迫るエスカリア帝国軍。連載開始から10年近くの間、これまで物語の中では「帝国軍」という漢字三文字で表現されるにすぎないことがほとんどであった、謎の帝国軍です(汗)。が、第40話より、ついにその恐るべき姿が本格的に明らかになります。

 ただし、最初に詳しく描かれることになるのは、例の「レンゲイルの壁」に迫る帝国の軍勢ではありません。今の段階では、ガノリス王国に侵攻して同国をほぼ手中に収めつつある方の帝国軍、その関係者のことが中心になります。

 ガノリス――といえば、そう、あの人です。火のパラディーヴァ・マスター、グレイルはガノリス人で、大切な相棒たちを帝国軍に殺されてしまいました。窮地に追い詰められたグレイルが、火のパラディーヴァ・フラメアを呼び出し、魔界の重騎士ことエクシリオスを操って帝国のヴェ・デレスの部隊を倒した回は印象的でした(第31話)。今、実際に帝国軍との戦いに入っているのは、主要な登場人物の中では、このグレイルだけです。
 そして、例のあやしげな(^^;)「鍵の守人」という組織もガノリスに潜んでいるのでしたね(第33話以降)。帝国軍は「鍵の守人」にも間近に迫っています。
 「御子」の一人であるグレイルが「鍵の守人」と接触するのは、当然の成り行き。さらに、そこにからんでくるのが、ガノリスのレジスタンスです。現在、もはやガノリスの正規軍は総崩れであり、王国は帝国軍の事実上の支配下にあるといってよいでしょう。そんな中で、ガノリス軍の残存兵力と義勇兵、市民たちが抵抗組織を作り、今なお戦い続けているのでした。しかし正規軍ですらかなわなかった、旧世界並みの技術力をもつ帝国軍に対し、このままではレジスタンスに勝機はありません。その一方で、ガノリスが完全に帝国の手に落ちれば、「鍵の守人」にとっては非常に不都合です。そこで両者の利害が一致し、「鍵の守人」は密かにレジスタンスを支援することに…。

 これまで、パラディーヴァ付きのグレイルや、帝国と同じく旧世界レベルの技術力を持つ「鍵の守人」は、さすがに強すぎでは?と思っていた方もいるかもしれません。が、帝国軍はやはり負けず劣らず強力です。そして、パラディーヴァに匹敵する力をも帝国は新たに手に入れようとしています。

 さて、そこで今回は、グレイルたちとガノリスで戦うことになる帝国軍に関し、主要な部分を先行的に紹介しておきましょう。従来および今後の謎にかかわるネタバレは含まれていないと思いますが……本編で公開される以前に話の内容を知りたくないという方は、以下、ご覧にならない方がよいかもしれません(汗)。

【プロジェクト・ゼーレム】
 帝国軍が極秘で進めてきた兵器の開発計画。かつて旧世界で生み出されたパラディーヴァと同様の存在を、現世界において新たに創造しようとする試みである。ゼーレムとは、そのパラディーヴァもどき(?)のこと。パラディーヴァ的な存在を創造するのは、現世界の魔法科学の水準では明らかに不可能なはず。一体、誰がどうやって……。
 ただし帝国軍は、パラディーヴァの単なる模倣や再現を目指しているのではない。パラディーヴァが自我を持ちすぎたことは兵器としての欠点であった、という仮説がプロジェクトの前提にある。見た目の点でも、パラディーヴァの外見が個々に大きく異なるのに対し、ゼーレムの場合、どの個体にも共通の特徴がある。赤く光る目、「口」のない無表情な顔(強い自我や個性はゼーレムに必要ないという開発思想を、暗に象徴している)等々。

【余談】
 ゼーレムというのは、ベタですが……ゼーレ(Seele 独語: 精神、心、魂)とゴーレム(Golem 独語・英語etc.: RPG等に出てくるあのゴーレムです。人工の魔法的存在ということで)を合成して作った言葉です(^^;)。

【ライ・ド・ランツェロー】
 帝国軍の機装騎士。帝国有数の名門貴族の出身で、エスカリアの皇子や皇女とも親しい学友であった。名家の生まれであるにもかかわらず、わざわざ好きこのんでエクターになるだけあり、実力は一流。だが、自分の思ったことをストレートに言動に反映させる性格のため、なおかつ考え方自体が多分にひねくれ気味のため、命令違反や同僚との衝突の絶えないトラブルメーカーである。とはいえ、根は真面目で使命感が強い。
 ガノリスの王キバンネスク攻撃の際にも、ライは重大な命令違反を行った。本来なら重い懲罰を受けるはずであったが……帝国軍上層部は、ライのエクターとしての能力の高さや、彼の家柄の良さ、皇帝一族とのつながり等々の事情を考慮し、帝国軍本陣の中核を為す機装騎士団「コルプ・レガロス」からライを退団させるという処分に留めた(ただし、名誉を重んじる貴族であるライにとって、実質的には、この不名誉は見た目よりも相当に厳しい処分となるだろう)。
 騎士団から外されたライではあれ、エクターとしてのその優れた技量を遊ばせておくのは惜しい。ということで、軍は彼を前出の「プロジェクト・ゼーレム」を進めている部隊に加えることに決定した。過酷な仕事であるため、懲罰的な左遷という意味合いも混じっているのかもしれない。彼の行き先はガノリス王国――特殊飛空艦アプゾルスを中心とする特命の独立機装兵団であった。

【ヴィア】
 ゼーレム計画の過程で作り出された、プロトタイプのゼーレムのひとつ。少女のような姿をしており、属性は「水」……明らかに誰かさんとぶつけるための設定では?(^^;) まだゼーレムは完成しているとは言えないため、ヴィアにも不安定な部分が多い。特に、彼女はゼーレムであるにもかかわらず多少の「人格」を有しており、むしろパラディーヴァに近い特性をもっている。また、他のゼーレムとは異なり、なぜかヴィアの目の色だけは黒く、戦闘時のみ赤色に変わる。

【特殊飛空艦アプゾルス】
 通常の飛空艦とは異なり、地上でホバリングのように浮き上がって高速走行することもできる。飛空艦というよりは、陸上戦艦という印象かもしれない。
 アプゾルスの表向きの任務は、レジスタンスの鎮圧と「鍵の守人」の壊滅である。しかし実際には、「プロジェクト・ゼーレム」に関する実戦データ収集を秘密裏に行っている。
 搭載されているアルマ・ヴィオも非常に強力。帝国の汎用型アルマ・ヴィオの上位機種である「ゼ・リット」を中心に、飛行型の「ヴィ・フロー」、そしてゼーレムの実験的運用のために改装された汎用型アルマ・ヴィオ「ルガ・ブロア」という陣容である。なお、帝国軍のアルマ・ヴィオは旧世界同様の技術によって生み出されているため、現世界の並みのアルマ・ヴィオでは基本的にまったく手も足も出ない。以前にグレイルたちがヴェ・デレスと遭遇したときのように…。

【ルガ・ブロア】
 ライに与えられた新たなアルマ・ヴィオ。ゼーレムとの融合を前提に、改良が施されている。
 金色の汎用型アルマ・ヴィオ「ルガ」は、帝国軍における最強の機体のひとつ。ルガにはいくつかのヴァリエーションがあり、タイプによって機体の金色以外の部分の色が異なる。帝国軍の先鋒隊のごく一部の精鋭に与えられるルガ・ロータ(金+赤色)や、近衛隊のエース級の機装騎士に与えられるルガ・ジェイダ(金+緑色。オーリウムでいえばエルムス・アルビオレに相当?)等々。
 ちなみにルガ・ブロアは金に青色。機体の特徴としては、基本性能がバランスよく高く、上記のロータやジェイダよりもさらに汎用性に優れる。ただしライのルガ・ブロアは特殊な実験機であるため、通常のブロアには無い装備を有する。実はライの機体は、単にゼーレムの試験的運用のための機体であるだけではなく、従来のMT(マギオ・テルマー)兵器を超えるPT兵器のテスト用でもあるのだった。PT(プシュカ・テルマー)技術による武器は、MTソードなどとは違って戦闘中に自在に形状を変化させることができ、エクターの力に応じて武器の威力も高まるという特徴をもつ。

グレイル&フラメア + 鍵の守人 + レジスタンス、
対するは、
最新鋭のアプゾルスをはじめ、精強を誇る帝国軍。
戦いの行方は……?

以上

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